【WDO 2021を終えて】

ブログ担です。今回は先日開催されたWorld Debate OpenでOpen Quarter Finalistになった増部さんに記事を書いていただきました!

 

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京大文学部3回の増部です。8/9-10に開催されたWorld Debate Openという大会に2回生の村社さんと参加してきました。WDOはMIDP(マレーシア版JPDUみたいな組織)主催の大会です。強そうな名前ですね。今回オンラインの海外大会は気軽に参加できると判明したので、少しでも興味がある方は是非出てみてください。今回のブログはベタなディベートブログの体裁で書きます。

 

目次


出場経緯
海外大会の手続き的なこと

各ラウンドの感想

まとめ

出場経緯

6月に周りがNDOに参加していて楽しそうだったので、なんか夏休みにいい感じにcompetitiveな大会に出たいと思っていたところ、KDSの俊哉さんが宣伝していたのを見かけてCAPが豪華だったのでWDOに出ることを決めました。春Tで組んだし組みやすそうという理由で村社さんを誘いました。自分から人を誘うと組む範囲が京大・阪大・神大の仲のいい人々(=いつものメンツ)になってしまうのが難点ですね……

 

海外大会の手続き的なこと

初めて海外大会に出る人向けに書いておきます。

①情報収集
だいたいAsia DebatingかJapan DebatersというFBのグループに流れています。入りましょう。または大会情報をまとめたspreadsheetもあるようです。参加者層によっては海外大会と国内大会の被りを防ぐためにもコミをやる人も日付ぐらいはチェックしておくといいかもしれません。

 

②参加登録

レジとアプリケは国内大会と同様にgoogle formを提出するだけだったので特に支障は感じませんでした。

 

③送金

海外送金をするのにwiseというサービスを使ったのですが、その際にマイナンバー付き書類を要求されました。学期中に授業の隙間時間を見つけて平日しか空いていない区役所に行って書類を取得し……と手続きが面倒だったので、将来海外大会に出る/出たい方は夏休みにでも海外送金サービスの登録を済ませておくと便利だと思います。一度登録してしまえばあとは楽です。

 

練習

大会前に1週間くらい毎日1-3 motionずつプレパ練をしました。私も村社さんも最後に出た大会が春Tで、前期は以後ほぼディベートをしていなかったので全然スピーチできないヤバい状態で、ひたすらopeningでプレパしてスピーチの感覚を取り戻す練習をしました。ラウンド練は大会前に2回やったのですが、どちらも4位でマジか……と雲行きの怪しい大会前でした。ちなみに練習で趣味のわけわからんことを言いたい病気で後輩を惑わすのはやめた方がいいです()

 

大会当日

 
R1(CG, 3位)

In post-conflict contexts, TH prefers the creation of art with messages of unity and inspiration, rather than art that seeks to depict previous or current suffering

 

Post-conflict contextに存在するアクターの分析がいまいち深まらず、OGの付け足しみたいな評価されないclosingになってしまいました。Openingがベタな話を出しててかつメカニズムが微妙だったので抜けなかったのは痛かったです。上が政策レベルで経済のリカバリーが上手くいくという話をしていたので、個人レベルでの融和が進む話を出したのですが、アートのメッセージにsympathizeされるという共通のメカニズムに依拠していて評価しづらいとジャッジに言われました。とりあえずextensionとなるケースは何だ!?と近視眼的に考えてしまった結果、impactが異なるケースは出せたものの分析レベルの差が不明になってしまいました。

またセットアップがきちんとできなかったのも改善点でした。デカい経済政策打てるほどpost-conflict stateは金に余裕ないとかanti-reconciliation groupsが存在していてカウンターナラティブが必要とか細かく具体的な設定をした上でプレゼンをしたらコンテクストのlikelihoodで明白に差をつけることができたと思います。

 

R2(CO, 2位)


TH regrets schools trading off character growth in pursuit of the academic development of students in Asia

人格形成より勉強の方が大事!OOが個人主義的な話をしてたのですが出力がエグくてR1と同様に辛うじてpoliticsのケースを立てたものの上は抜けず。同じ負けパターンでした。ちゃんと今回は何で上を抜くのか?-比較やフレームで抜く!といった意識がないとダメだなと強く思いました。

R3(OG, 2位)


TH prefers a world where the ANC had more aggressively pursued economic and land reparations during the negotiations in ending the apartheid

歴史修正論題。これはOGのポジションも相まってやりやすかったです。ANCと白人層がこの条件でも合意可能って話をした後、Gentrificationでよくやる仕事につけない・スラム化して治安悪くなってるのが解決されるベタな話をしました。Landに関してはチナ・ムローフェ『トイレ』に出てくるような白人の家に召使いとして住んでいた黒人に、そのまま召使い部屋をあげるという話をセットアップでしてdiscriminationをneutralizeしようとしたのをジャッジのxiao ke luが評価してくれて嬉しかったです。他にも経済制裁やpast colonizersとの関わりをいろいろ話したのですが、普通に歴史の知識不足を実感しました。自分のスピーチが終わった後にクッツェーの『マイケル・K』やビヴァリー・ナイドゥー『ヨハネスブルグへの旅』に描かれる、ヨハネスブルグと「ホームランド」の単なる地理的な距離の遠さ以上に移動それ自体が命の危険を伴うことや、武装集団化した白人プランター、Gated communityを形成している白人層などの例を想起することができましたが時すでにお寿司。それらもきちんと分析に取り込めればよかったです。

南アフリカは映画だと “Invictus”が有名だと思いますが、文学もよいものがあるので是非読んでみてください。上記に挙げたもの以外だとバーバラ・チェイス・リボウ『ホッテントット・ヴィーナス ある物語』、同人誌ですがカモガワGブックスの非英米圏文学特集に収録されているFLUIDEさんが執筆している南アフリカ性文学論などがおすすめです。ラウンド中に文学オタクモードが強いかは微妙ですが、海外文学や英詩、児童文学が好きな方はそちらの方面を深堀りしてゆくことでディベートに有用な情報を拾い集めることもできるという紹介でした。

https://booth.pm/ja/items/1476651 

 

R4(OO, 2位)


TH regrets the trend of prominent businesswomen giving advice on how to succeed in status quo corporate culture (e.g. lean-in feminism), rather than fighting to radically reform that culture

はいプロ。世界一リサーチが上手。R4は2日目12時(JST)から開始だったのですが、リサーチ界のtouristであるところの村社さんが午前中にフェミニズム論題をやろうと提案して2つやっていたので、論題が出た瞬間進研ゼミ状態でめちゃくちゃ気が楽でした。Career pathを広めてより多くの女性が会社で成功できるというベタな話を堅実に詰め、「やるべきことをやる」OOができたと思います。ただOGが自滅していたおかげでCGにいたNDOチャンピオンが無限のエクステンションとめちゃくちゃ上手いフレームを披露し抜かれましたが……

 

QF(CG, Lose)


THW prohibit corporations from making employment decisions based on the opinions, preferences, and expressions of their employees outside of work

これもR1,2と同じパターンで負け。上とのdifferentiationの弱さを大会中で修正できなかったのが悔やまれます

 

課題

論題から導かれるベタなケースを相手のサイドの予想されるアーギュメントを踏まえて立てるという左右の比較/horizontalは非常に安定して行えていた一方で、Closingの弱さが露見した大会でした。openingは一貫して2位を取り続けていた一方で、CG3位, CO2位, CG loseと下振れており、R2のCOで2位を取りましたがこれも1点ラウンドだったので普通にエクステンションあるし完成度比較でも全然ガバベンに勝てたという積極的に評価できる内容ではありませんでした。ラウンドに対するcontributionという意識が希薄だったこと、ケースを立てたものの上との比較やフレームが微妙だったこと、differentiationが上手くできないので最初からverticalでextensionを出すことを諦めていたこと、knifingがあったことなどが今後の課題かなと思います。

 

感想

 

今回初の海外大会でブレイクできて楽しかったです。しかし、大会出たらなるべく多くのmotionやれた方が楽しいので、正直なところもう1ラウンドやりたかったです(笑)。SFのParticipatory Budgetが面白そうで、予算配分を誰が握るべきか?みたいな硬派な話からglass routes movementの活性化みたいな最近(といっても結構前からある話ではあるけど)流行りの話までいろいろできそうです。リサーチしてみると、大規模なPBは格差是正に効果があることがブラジルで実証されてるらしく制度としても面白そうだなと感じました。また海外大会に出るぞ~!誰か組んでください。よろしくお願いいたします。

 

 

また最後に、今回組んでくれた村社さんには感謝しかないです。何度かスタンスが決まらず焦らせてしまったこともありましたが、ディベートの競技理解の深さと分析を自力で考える能力の高さゆえに、基本的には互いに役割分担の下自律して細かいケースを詰める・反論を考えることができていましたし、特に権力の非対称性に基づくダンプはなかったです(権力の非対称性に基づく総括。強く感じていたらマジですみません)。個人的には分からんところは互いに素直に分からん!と言って丸投げできたので非常にやりやすいチームでした。(もうちょいがんばれよ自分......)また、プレパでスタンスを互いに批判的にチェックしながら考えれたことでコンスタントに堅いケースビルディングを行うことができ、大会を通じて安定した順位をたたき出すことができたのかなと思います。私が先輩としてなにかできていたかというよりむしろ村社さんのR4予知やスタンスの設定などで結構助けられており、非常に感謝しています。ありがとうございました!

 

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アカハライモリ。家に集まって大会に出たのですが、ラウンド間は両生類観察会を開いていました。

 

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ヒキガエルのだいふく。かわいい。

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